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弁護士が教える離婚した相手とこどもの面会拒否のポイント
子どものいる夫婦が離婚すると、子どもと離れて暮らす親には面会交流権が認められます。ただ、離婚理由や相手側の状況によっては「どうしても子どもに会わせたくない」と考える監護者もいるでしょう。その場合、面会交流を拒否するにはどうしたらよいのでしょうか。
面会交流とは
面会交流とは、具体的には定期的に会ったり、電話やメールで連絡を取り合ったり、プレゼントの受け渡しをするなど、離婚により離れて暮らす親子が交流をすることです。「面接交渉」や「面接交渉権」とも呼ばれていますが、近年は「面会交流」が一般的な呼び名です。
夫婦の話し合いでは、面会交流の可否や頻度などについて合意できなかった場合は、家庭裁判所に調停を申し立てます。調停では、双方の主張を聞いたうえで面会交流について合意を促すか、合意に至らなければ審判を下します。
「どうしても離婚した相手に子どもを合わせたくない」と考える監護者には厳しい現実ですが、基本的には面会交流を拒否することはできません。しかし、例外は認められています。
面会交流は拒否できる
面会交流は、正当な理由があれば拒否することができます。正当な理由とは、「未成年者の子どもの福祉に悪影響がある」と裁判所が判断するような場合です。
そもそも、面会交流は子どもと離れて暮らす親の権利であると同時に、子どもの権利でもあることを理解しておきましょう。裁判所も、「親の愛情を感じる時間は子どもの福祉にとって必要である」という考え方に基づいて、基本的には面会交流を実施させる判断をしています。
家庭裁判所は、親権や面会交流については「子どもの幸せ」を判断基準にしています。そのため面会交流を拒否するには、親の都合ではなく「子どもの幸せにとって不利益がある」「子どもの福祉に悪影響がある」ことを主張する必要があります。決して、「子の引き渡しのときに相手と顔を合わせるのが嫌だ」とか「不倫した元夫の希望を叶えたくない」など、親の感情的な理由では認められません。
面会交流を拒否するための正しい知識と条件
それでは、面会交流が拒否できる具体的な理由を見ていきましょう。おもに、5つの理由が挙げられます。
○ 相手が子どもを虐待していた、または虐待する恐れがある
児童虐待は子どもの福祉に反する重大な行為として認められます。ただし、親権者が口頭で主張するだけでは虐待の事実を証明するのは難しいので、怪我の診断書、写真、専門機関に相談した記録など証拠を集めておきましょう。
○ 相手が子どもを連れ去る恐れがある
監護権を取れなかった親が面会交流に乗じて子どもを連れ去るようなことがあれば、突然家に帰れなくなった子どもの精神的ショックははかり知れません。ただこの理由だけでは、弁護士など第三者の立ち会いや、面会交流支援団体の利用など連れ去り対策をした上で会わせるよう指導される可能性があります。
○ 子どもが交流することを嫌がっている
子どもが自分の意見をしっかり言える年齢に達している場合は、子どもの意見が重視されます。とくに15歳以上の子どもがはっきり拒絶していれば、面会交流の拒否が認められることが多くなります。
○ 面会交流を行うと、子どもが精神的に不安定になる
面会交流の目的は、子どもが親の愛情を感じることです。逆に恐怖心などマイナスの感情を感じて、面会交流後に不登校になる、体調が悪くなる、暴力的になるなど精神的に不安定になる場合は、面会交流を拒否できます。
○ 子どもに危険が及ぶ可能性がある
例えば、相手がアルコール中毒で暴力を振るう可能性があったり、違法薬物を使用しているような場合は拒否の正当な理由になります。とくに違法行為を行っているような人物と会わせないのは、親権者として当然のことです。
以上のような理由があれば面会交流を拒否できますが、裁判所は基本的には「子どもの福祉のために必要」というスタンスであることは覚悟しておきましょう。また、調停で決定された面会交流の条件は、約束通り履行しなければ罰則があるため注意が必要です。
相手から訴えられる可能性と注意点
調停調書に記された面会交流を、監護者が勝手に拒否していると相手から違法行為として訴えられるかもしれません。また、協議離婚であっても面会交流を行うと記した公正証書があれば、それを根拠に訴えられてしまいます。
具体的には履行勧告と呼ばれる裁判所からの指導があり、それも無視していると財産の差押えや罰金を課す強制執行によって間接強制されます。給与の差押えともなれば子どもの養育にも影響があるため、このような事態を招かないよう正式な手続きを踏んで面会交流を拒否することが大切です。
一度は面会交流を実施すると約束したものの状況が変わり拒否したい場合は、調停を申し立てて裁判所に正式に認めてもらいましょう。調停に不安を感じる場合は、離婚問題に詳しい法律事務所に相談するのも1つの方法です。弁護士に依頼すると着手金や報酬金がかかりますが、相手側が慰謝料を請求してくる可能性もありますので、まずは事務所に相談してみることをおすすめします。
参考URL
<弁護士ドットコム>「子どもに会わせたくないと思ったら – 面会交流を拒否できる理由と注意点」
https://www.bengo4.com/c_3/c_1377/gu_13/
<弁護士ドットコム>「面会交流を拒否された場合の対処法 – 強制執行による間接強制や慰謝料請求・親権者変更について」
https://www.bengo4.com/c_3/c_1377/gu_14/
<初めての調停>「調停で面会交流を拒否・制限できる5つの理由」
http://choutei.net/kaji/menkaikouryuu/kyohi-seigen/