離婚後に子供の苗字や戸籍がどうなるのかを知らない人もいるのではないでしょうか。離婚後の子供の苗字と戸籍の変更手続きは意外と複雑で、正確に理解されていないことが多いようです。今回は、離婚前に知っておきたい子供の苗字と戸籍についてご案内していきます。

 

離婚後の苗字はどちらの姓を名乗るか選べる

離婚時の戸籍は、結婚したときに姓が変わった人が抜けることになっています。結婚後に夫の姓を名乗っていた女性は、離婚すると原則として旧姓に戻ることになります。しかし、さまざまな理由により離婚後も引き続き結婚していた時の苗字を使いたい場合もあるでしょう。そのような場合は、離婚成立から3か月以内に「離婚の際に称していた氏を称する旨の届」を夫婦の本籍地か現在居住している所轄の役所に提出すれば、婚姻時の苗字を名乗ることができます。この届は離婚届と同時に提出することも可能です。離婚を進める際には、離婚後の苗字をどうするか事前に決めておくと、その後の手続きもスムーズです。
また、旧姓に戻ると、原則として前の戸籍に復籍することになりますが、両親が他界して戸籍が消失していた場合や「離婚の際に称していた氏を称する旨の届」を提出して婚姻時の苗字を名乗る場合、婚姻前の氏に戻り新戸籍編製の申し出をする場合には、新しく戸籍を作ることになります。

 

子どもの苗字の変更と戸籍の関係

夫婦の間に子どもがいる場合には、手続きがもう少し複雑になります。まず両親が離婚しても子供は結婚時の戸籍に残るため、子どもの苗字は変わりません。もし親権者となった母親が旧姓に戻ったとしても、子供の戸籍は動かないのです。つまり親権のある母親と子供の苗字が異なるという事態が起きてしまうのです。さらに母親が「離婚の際に称していた氏を称する旨の届」を出した場合でもこの手続きによる氏と婚姻時の氏は法律上、別の氏として扱われます。一見、同じ苗字に見えても法律上は母親と子供の氏が別ということになるのです。
ここで、子供の戸籍についても説明しておきましょう。日本では新しく戸籍を作る際に筆頭者を立てる必要があります。結婚によって戸籍を作る場合には夫が筆頭者となるケースがほとんどです。その夫婦の間に生まれた子供も当然同じ戸籍に入ります。
夫婦が離婚しても子供の戸籍は変わらず、手続きをしない限り親権者である母親の戸籍に移動することもありません。さらに、苗字が異なる親の戸籍には子供を入れることができないようになっています。そのため、子供の戸籍を移動させるにはまず苗字の変更手続きが必要です。

 

子どもの戸籍の変更手続きは家庭裁判所へ

子供の苗字を変更するには、家庭裁判所に「子の氏の変更許可申立」をする必要があります。裁判所から苗字の変更の許可が出たら、「子の氏の変更許可審判書謄本」が交付され、次は所轄の役所で子供の入籍届を提出します。これが受理されると、ようやく子供の苗字と戸籍を親権者である母親と同じにすることができるのです。
「子の氏の変更許可申立」も入籍の届出も、子供が15歳未満である場合には法定代理人である親権者が行い、子供が15歳以上の場合には本人が行うことになっています。

事前確認が重要！学資保険等の名義変更、振込先変更手続きなど(名義変更、振込先など)
離婚で争われることの多い問題に財産分与があります。財産分与とは、夫婦が婚姻中に共同で築いた財産を離婚の際に分配することですが、子供にかけてきた学資保険も対象となります。学資保険の被保険者は子供ですが、かけ金を支払っているのは親であるため、財産分与の対象となるのです。
父親が母親よりも収入が多ければ、学資保険の契約者も父である可能性が高いでしょう。この場合、離婚をして母親が親権を得たとしても学資保険の名義が自動的に親権者に移されることはありません。契約をしている本人が解約または名義変更の手続きを行わない限り、学資保険の契約者は父親のままということになるのです。
離婚の際に、学資保険を解約して返戻金を夫婦で分配するという方法もありますが、支払額よりも大幅に減額となることも考えられます。また、何よりも学資保険は子供の将来のための保険です。解約しないで継続していく可能性が高いでしょう。
その場合には、できる限り契約の名義を親権者である母親に変更しておくことをおすすめします。離婚のときに夫婦の間できちんとした話し合いが持たれていたとしても、年月の経過とともに契約者である父親の気持ちが変わってしまえば、途中解約されたり、満期になって振り込まれた保険金を渡してくれない可能性もあります。
保険会社の名義変更や振込先変更の手続きは、簡単にはできないことが多く、様々な書類が必要なため面倒なものです。しかし、後からトラブルにならないためにも、早いうちに親権者である母親に契約者と受取人の名義を変更しておくようにしましょう。

ただでさえ精神的負担が大きく大変な離婚ですが、子供がいると、さらに複雑なことが多くなります。しかし、のちのち後悔しないためにも手続きはできるだけきちんと済ませておくようにしましょう。一番大変な時期を乗り越えれば、きっと幸せな未来が訪れるはずです。