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弁護士が教える離婚の内容証明が届いたらすべきこと
ある日、突然、離婚に関する内容証明が届いたら、いったいどうすればいいのでしょうか?何か手立てはあるのでしょうか?内容証明の効力と、知っておくべきことを説明します。
知っておかないといけない内容証明郵便について
ある日、突然、内容証明郵便が届いたら動揺してしまう人が大半だと思います。架空詐欺の手口でも内容証明という言葉が使われたりします。内容証明郵便とは、「誰がいつ、誰宛にどんな手紙をだしたか」を郵便局が証明してくれるサービスです。配達証明つきにすると、配達した日付を知らせてくれるので、相手がいつ受け取ったかも分かります。
- フォーマットが決まっている
形式的な決まりがあり、1枚520字以内で縦書きの場合は1行20字以内、1枚26行以内、横書きの場合は1行20字以内、1枚26行以内という形式上の決まりがあります。2枚以上になる場合は、ホチキスで綴じ、繋ぎ目に割り印を押します。離婚関連であればタイトルは、慰謝料通知書や通知書などとなっていることが多いでしょう。また離婚の内容証明郵便は、弁護士などの法律の専門家から届くことがあります。「当職は、○○○○氏より貴殿に対する不倫の慰謝料請求に関して依頼を受けました代理人弁護士です」などと記載されています。
- 内容証明の効力について
内容証明には以下のような3つの効力があります。
(1)受取人にプレッシャーを与える
内容証明郵便自体に法的拘束力はありませんが、通常の郵便物とは様式も異なるため、受け取った側は、心理的な圧力を感じます。弁護士など普段、接することがない法律の専門家が代理人となっていたらなおさらです。離婚の話し合いでは、慰謝料を払うことを渋っていた相手が、内容証明郵便で通知を出しただけで支払ってくれるという効果もあります。「弁護士の名前が記載されている!裁判を起こす気だ!こちらも弁護士を探さなければならない。弁護士に依頼すると費用がかかるし、裁判になると仕事も休まなければいけないなど影響がでる。そんなことが会社や家族に知られたら大変なことになる。今の生活や社会的な地位が脅かされる。であればお金を払ったほういいのかもしれない」と思わせることができるからです。
(2)証拠としての証明力がある
「いつ、誰に、どのような内容の意思表示をしたか」ということを証明できます。
後に裁判になっときに、証拠として使えるでしょう。
(3)時効中断事由としての「催告」になる
なぜ慰謝料を請求したことを証明する必要があるのでしょうか? それは時効との関係です。離婚の原因が不倫であれば、慰謝料請求できる時効は原則として配偶者の不倫を知ったときから3年です。3年経過する間際に慰謝料の請求をすれば、その後6か月までは時効にならず、それまでに裁判を提起すれば良いとされています(民法153条)。この「請求」を行ったことを証明するために、内容証明郵便が利用されるのです。
ただしあくまでも内容証明郵便は、手紙を作成し送ったことの証明であって、その内容が正しいという証明でないことを頭に入れておきましょう。
内容証明が届いたらまず、冷静に確認を!!
まずは動揺せず、冷静になることです。離婚に際して必ずしも慰謝料を払う必要はありません。あなたに責任がある場合のみ払う必要があるのです。
- 相手の要求にしたがわない
不倫の事実があっても相手の夫婦関係が事実上、破綻しているときは、不倫慰謝料を払わなくてもよい場合もあるのです。したがって内容証明郵便に慰謝料請求書や下記のような記載があっても慌てて振り込んだりしないようにしましょう。
「2週間以内に200万円を下記銀行口座に振り込みによりお支払いください。お振込みがない場合は、〇〇地方裁判所へ提訴いたします」
このような請求には、法的拘束力はありません。200万円を期限までに支払わないからといって遅延損害金などの罰則が生じるものでもないからです。相手方の要求が述べられているにすぎません。
- 反論するのもよくないが無視してもいけない
また感情のおもむくままに相手に対して反論するのも得策ではありません。余計な発言などの言質をとられ、裁判に持ち込まれた際に不利となる可能性があります。しかし内容証明を全く無視するのもよくありません。特に弁護士が代理人としてなっている場合は、なんらかの法的な根拠があるので送付してきたのかもしれません。裁判を起こされれば、内容証明を無視したことが不利となります。
また代理人が行政書士の場合も弁護士と同様に考えましょう。行政書士は調停や訴訟に関わることができないため、行政書士名義での慰謝料請求の場合は無視しておいても法的措置は取られないと思われるかもしれません。しかし弁護士事務所と繋がりがある行政書士も多く、弁護士と同様に考えたほうがよいのです。通知や請求に対しては、その内容をよく確認することが大切です。
請求内容に対し、反論や納得がいかない点はあるか、ある場合、それはどのような点かをまとめ、相手の弁護士にそれを伝えましょう。また、自分で交渉しようとせず、実績のある弁護士などの専門家に相談することをお勧めします。