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「裁判離婚」は、家庭裁判所で調停を行っても離婚が成立しなかった人に残された、最後の手段です。離婚の訴訟を提起するにはどんな条件が必要なのでしょうか?また、裁判離婚の期間や費用はどれくらいかかるのでしょうか?おさえておきたいポイントをまとめてみました。

 

そもそも裁判離婚って何?

夫婦で話し合う協議離婚、調停で交渉する調停離婚を試みても、相手が離婚そのものに合意しなかったり、財産分与・慰謝料・養育費などの請求で折り合いがつかない場合があります。それでも離婚への決意が固ければ、家庭裁判所に訴訟を提起し「裁判離婚」を目指すことになります。

 

協議や調停でも合意できなければ裁判へ

夫婦が話し合う協議離婚、家庭裁判所の調停で交渉する調停離婚を行っても離婚の合意がまとまらなかった場合は、家庭裁判所に訴訟を提起できます。調停を経ずにいきなり訴訟を提起することはできません(調停前置主義)。一審で負けても、第二審(高等裁判所)、第三審(最高裁判所)まで争うことが認められています。判決の確定で離婚は成立しますが、その後市区町村役場への離婚届けの提出も必要です。
なお、離婚訴訟の途中で判決を待たずに折り合いがついた場合や、裁判官の和解勧告を受け入れた場合は和解調書を作成し「和解離婚」となります。

 

提訴には法定離婚原因が必要

離婚訴訟を起こすには、法律に定められた離婚原因が必要です。

1. 相手に不貞行為があった
離婚訴訟における「不貞」は、婚姻を破綻させる程度かどうかが問題視されます。つまりたった1回の浮気ではなく、継続的な関係を指します。不貞が原因の離婚は慰謝料を請求できます。

2. 悪意の遺棄があった
夫婦は同居して家計を一にし、助け合って生活するのが一般的です。しかし配偶者が理由なく別の家に住んだり生活費を渡さないという行為があれば、それは同居義務や扶養義務に反しています。これらの行為は「悪意の遺棄」にあたり、離婚の原因とみなされます。

3. 3年以上生死不明
この場合は調停を経ずにいきなり離婚訴訟を提起することが可能です。なお、配偶者が蒸発した、生活費の送金がストップしたというケースは「悪意の遺棄」にあたり、3年を待たずに離婚訴訟を起こせます。

4. 回復の見込みのない強度の精神病
精神病の有無や回復の見込みは医師が判断します。特に回復の見込みの見極めは時間がかかる場合もあり、精神科に入院した直後に離婚の請求を行っても認められないケースがほとんどです。

5. 婚姻を継続しがたい重大な事由
何らかの事情の結果、愛情が冷めて今後の夫婦関係を維持することが難しいなら、「婚姻を継続しがたい重大な事由」と判断されます。その内容は、性格の不一致、性の不一致、DV、配偶者の親族から受けたいじめなど、多岐にわたります。

 

裁判離婚ってどれくらいの期間かかるの?

当然ながら、離婚訴訟は仕事や日々の生活と並行して行わなければなりません。離婚訴訟の原告となれば、裁判所に出向いたり弁護士と打ち合わせをしたりと、時間の負担が増すことを覚悟する必要があります。裁判離婚が成立するにはどれくらいの期間がかかるのでしょうか?

 

裁判離婚の流れ

原告が訴状を提出すると、1〜1か月半後に第一回口頭弁論の期日が決まります。裁判所は双方の争点を整理して和解手続きの勧告を行いますが、財産分与や親権者など条件が折り合わず和解は困難と判断すれば判決手続きに戻ります。原告は、被告に離婚原因があることを証拠書類の提出などで立証していきます。審理は月に1回程度です。審理を尽くして口頭弁論が終結すれば、判決が出されます。

 

裁判離婚にかかる期間

裁判にかかる期間は案件ごとに異なりますが、和解せずに判決までかかる場合は訴訟提起から10か月〜1年ほどかかるとされています。和解勧告を受け入れた場合は少し短くなり、8〜10か月程度ですが、ケースによってはさらに長期間に及びます。

 

裁判離婚にかかる費用はどれくらい?

訴訟には時間だけでなくお金もかかります。なぜなら、訴訟には法律の専門知識と法廷での駆け引きが要求され、弁護士に依頼する場合がほとんどだからです。訴訟の提起と弁護士費用にそれぞれいくらかかるのでしょうか?

 

訴訟の提起にかかる費用

提訴の際は、訴状に収入印紙を貼ります。印紙の金額は原告の請求の内容により異なります。
【事例】
・離婚と親権者指定の場合(訴額を160万円として算定)…1万3000円
・離婚、親権者指定、慰謝料300万円、財産分与2000万円の場合…離婚請求と慰謝料請求の印紙代のうち金額が多い方(このケースは慰謝料請求の2万円)+財産分与の印紙代(1200円)

このほか連絡用の切手代に約1万円かかります。

参照元:石原豊昭・内海徹『離婚を考えたらこの1冊 第4版』(自由国民社、2014) pp.140

 

弁護士に依頼するとかかる費用

弁護士報酬は自由に定めて良いので、離婚訴訟にいくらかかるのかは法律事務所によって異なりますが、日本弁護士連合会が「市民のための弁護士報酬ガイド」で公開している2008年度の弁護士へのアンケート結果が目安になります。

【事例】
夫の暴力などに耐えられず、離婚を希望。自分で申し立てた調停は不調に終わったが、訴訟は弁護士に依頼して離婚が成立し、慰謝料200万円(請求の満額)の支払いを受けた。3歳の子どもの親権も希望通り認められ、養育費として毎月3万円の支払いを受けることになった。

この事例では、着手金については30万円前後(回答率53%)が最も多く、2番目に多いのが20万円前後(回答率26%)でした。また、報酬金は30万円前後(回答率37%)が最も多く、2番目に多いのが20万円前後(回答率20%)でした。

参照元:http://www.nichibenren.or.jp/library/ja/attorneys_fee/data/guide.pdf

離婚訴訟に臨む人は、すでに夫婦の話し合いや調停でもめて心身に疲れを感じている状態でしょう。そこからさらに1年程度の期間や数十万円の費用をかけて行うのですから、本人への負担は相当なものです。最初から弁護士に依頼して協議離婚にしておけば良かったと後悔するかもしれません。離婚を考えるなら自分が譲れない条件は何かを明確にして、様々な方法のメリット・デメリットをしっかり検討してみて下さい。

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